協働成果レポートを執筆しました/日本ベンチャーフィランソロピー基金×認定NPO法人発達わんぱく会
日本初の本格的なベンチャーフィランソロピーである「日本ベンチャーフィランソロピー基金」(通称:JVPF)
この度、JVPFの支援による2例目の卒業団体「NPO法人発達わんぱく会」さんの協働成果をまとめたレポートを執筆しました。
◆JVPF 協働成果レポート 発達わんぱく会編(2019.7 発行)
http://jvpf.jp/wp-content/uploads/2019/07/JVPF_report_wanpaku.pdf
報告書は、7月2日に開催されたJVPFのアニュアルギャザリングにて配布・公開されました。
■ベンチャーフィランソロピーとは?
ベンチャーフィランソロピー(以下、VPと略記)とは、
- 社会課題の解決を目指す組織に対して
- 経営的支援と資金的支援を統合的に提供し
- 経営全体への高いコミットメントを伴いながら
- 社会課題解決に向けたインパクト拡大を目指す仕組み
を指します。
私自身がベンチャーフィランソロピーに出会ったのは2011年のこと。いくつかレポートも書きました。
英国で訪問したベンチャーフィランソロピーの実践は、当時日本には殆ど紹介されておらず、それから数年後にJVPFが立ち上がった際にはとても嬉しかったことを覚えています。
■JVPFとは
2013年に誕生したJVPFは、公益財団法人 日本財団と、一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP)とが共同で運営する基金です。
「資金提供」と「経営支援」を通じて社会的事業を行う組織の成長をサポートするのが特徴で、現在の基金総額は約8億円です。
これまでの支援先は、以下の6つで、発達わんぱく会さんは、放課後NPOアフタースクールさんに続き、2つ目の卒業団体(支援終了団体)となります。
またプロボノパートナーとして、4つの企業と提携を結んでいます。
■今回のレポートについて
今回のレポートは、JVPFと認定NPO法人発達わんぱく会との3年間の協働の成果を取りまとめたものです。
発達わんぱく会は、
「発達に障がいのある子どもたちに対し、早期発見・早期療育を提供することで、すべての子どもが自分らしく幸せに生きることを支えること」
を目的に活動するNPO法人で、千葉県や東京都を中心に事業を展開されています。
発達わんぱく会理事長の小田知宏さんとは、2011年に初めて出会いました。
当時、NPO法人ETIC.さんが実施されていた「ソーシャルベンチャースタートアップマーケット」の支援起業家の一人でした。
私は同プログラムの振り返りや評価のレポーティングを担当していて、当時まだ1つしかなかった発達わんぱく会の教室にETIC.のスタッフと共にお邪魔し、子どもたちやそのご家族に囲まれる小田さんにお会いしたのでした。
JVPFが発達わんぱく会の支援を開始したのが2016年のこと。
デューデリジェンスを含むコミュニケーションは、その約1年前にスタートしています。
本レポートでは、2016年~2018年度の3年間の協働期間を中心に、その前後1年を含む合計5年間の変化を俯瞰した内容になっています。
■価値を言語化する作業
株式会社 風とつばさのお仕事として、JVPFさんのレポートを担当したのは2回目になります。
レポート執筆にあたっては、繰り返し発達わんぱく会さん側、そしてJVPFさん側と対話をし、内容を作り上げていきました。
こうしたレポーティングは、インタビュー記事を書く、起こった出来事を描写する、といったタイプの執筆とは質的に全く異なります。
むしろ、
「結局のところ、この3年間に団体にどんな変化が起こっていたのか」
「協働の価値とは何だったのか」
を、協働の担い手であるJVPFと発達わんぱく会さんの双方との対話を通じて探り出す作業です。
この「対話」というところがポイントでして、単に「ヒアリング」しているのとはこちらの関わり方が全く異なります。
また使っている脳の部分も、どちらかというと“ファシリテーター的な脳”であるように感じます。
3年間で生まれた価値を、発達わんぱく会さんと、JVPFさんそれぞれと対話しながら振り返り、その意味を改めて見出していく。
そして最後に、対話によって得られた果実をPCに向かって読者にも伝わるようにストーリーとして紡ぎ直す。
そんな作業を積み重ねながら、レポートが完成に近づいていきます。
◼︎振り返りるから学びになる。“次”に挑戦できる。
こうした振り返りは本当に重要で、
- 「経験」を「学び」に変える
- 日々はそれでも続いていくが、ひとつの区切りとして、次のステージに移行する原動力とする
ためには欠かせないものです。
ある意味でのイニシエーションと言っても良いかもしれません。
今回嬉しかったことは、理事長の小田さんに繰り返し、
「やっとやってきたことが俯瞰できた」
「その時の苦労とスタッフへの感謝が同時に湧いてきた」
と言っていただいたことです。
JVPFの支援はとても本質的で、だからこそ組織に対する負荷は相当なものだと思います。
日常のサービス提供(発達わんぱく会でいえば日々教室を開き、療育事業を行い、子どもさんとそのご家族に向き合う)ことに加えて、組織のあり方とサービスのあり方を根本から見直し、時間をかけ、改善していく。
その負担はおそらく想像しても仕切れないものだと思います。
もちろん、レポート作成にあたっては相当細かく聞いてはいますが、結局のところその大変さは当事者にしかわからない。
ランニングの辛さと楽しさは、ランナーしかわからないように。
しかし大変だったからこそ、総括すること、振り返ることは、学びに変える意味でも、次のステージに移行する意味でも、時間と労力をかける意義があると思います。
書いている側も、レポーティングや分析はいつも脳が捩る感覚があります。
しかしながら、意味があったと実践者に言っていただく喜びに勝るものはないなと思う次第です。
■素敵なデザインに仕上がりました
今回のレポート、読みやすくデザインしてくださったのは、川本真悠子さん。落ち着いた色調かつ、発達わんぱく会の生き生きとした活動のイメージを素敵に表現して下さいました。
川本さん、ありがとうございました!
JVPFさんと発達わんぱく会さんの3年間(+2年間)の試行錯誤の軌跡、皆さまぜひ、お読みください。