イギリスにはCICっていう法人形態がありまして。(ソーシャルビジネスの法人格、コミュニティ利益会社)

世の中を良くする会社。コミュニティを豊かにする会社。そんな会社がもっと増えたらいい。そう思いませんか?

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来週から、久々に海外出張でロンドンへ。

で、金曜にデスクで出張準備をしていたら、こんなものを発掘しました。

中はこんな感じです。

CICとは、「Community Interest Company」のこと。
日本語訳すると、「コミュニティ利益会社」ですね。

上に挙げた写真は、CICのカード型事例集です。

2011年にロンドンを訪問した時に貰ったもの。我ながらよく取ってあったなあ・・・。。

1カード1団体。きっとカードがその時々で入れ替えられているんですね。便利です。

CICは、イギリスで2005年に誕生しました。

会社法改正により設けられた新しいタイプの会社で、法人形態としては、株式会社や有限会社(Company Limited by Guarantee、Private Company Limited by Shares、Public Company Limited by Shares)にあたります。

その意義は、「利益を社会的課題の解決に使う会社」であること。

(コミュニティの利益、と表現されていますが、特定のエリアの利益を産みだす会社、という意味ではないです。社会の利益というイメージですね。)

コミュニティの利益にかなっているかどうかは、Regulatorと呼ばれる「監督官」が判断します。

CICのステータスを獲得する際に、「コミュニティ・インタレスト・テスト」なるものを受け、それをパスしないとCICになれないのです。

話を聞きにいって、なるほど、と思ったことは、登記プロセスが一般的な会社の登記の延長線上にあるということ。

法人登記とCICのステータス獲得が同一線上にある。私が聞いた時点では、すべての審査は15日以内に終了するとのことでした。

もうひとつ、大事な特徴が。それが「アセットロック」です。

アセットロックは、ざっくり言うと、

「株式会社だから儲けてもいいよ。配当してもいいよ。でもコミュニティの利益のための会社だから、投資家に儲けを配当する時には、そこそこの程度にしておいてね。ある程度は次の事業やコミュニティへの再投資に回してね。」

って感じでしょうか。

CICの配当には上限が設けられています。

でもその範囲内であれば配当が可能。

つまり、投資する側にとっての魅力はある程度維持しながら、「コミュニティの利益」とのバランスを取り設計された制度、と言えます。 

詳細は昔、こちらにまとめました。

http://www5.cao.go.jp/npc/pdf/syakaiteki-kaigai.pdf

仕組みの話は難しいけれど、中にあるコミュニティ交通の事例は、けっこう面白いなあと思うのです。

チャリティが分社化してコミュニティ交通の会社をCICとして運営している事例。

こちらはまた別の機会に書きたいなと思います。

こんな感じのレポートを過去に発行。
その当時の状況にはなりますが、かなり細かく解説してます。

以下は本題とは関係のあまりない独り言ですが。


このヒアリングのために一人でロンドンに行っていた、その時に東日本大震災が日本で発生しまして。

CIC監督局のロビーで、BBCが流すNHKの中継を一人食い入るように見ていたのでした。

頭真っ白になりながら、CIC監督官に、日本の家族は大丈夫か?と聞かれながらヒアリングをしたことを思い出しました。

その時に比べると、日本のソーシャルセクターはどう変わったか。

イギリスは、世界はどう変わったか。

ヒアリングの時、CIC監督官に、「イギリスはCICバブルだ」って言われたのです。

確かにその後、法人数は増えています。



社会的な課題解決を目指す際の法人形態の選択肢が増えたこと。
それを使って活動する人が増えたという事実。
完璧な制度ではないと、ご本人たち(=監督する側も、使う側の団体も)そう言っているけれど、利益出しながら社会性を主張できる。そんな仕組みに見習うべきところも多いと思います。
2016年01月17日 | Posted in 過去ブログからの移行記事(2017年3月以前) | | Comments Closed 

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