NPOが「調査しよう!」と思った時に知っておきたい4つのこと/「社会調査入門」玉野先生のお話を久々にお聞きして。

「調べる力」ついてますか?

「問える力」ついてますか?
公益活動を行う上で「調べる」力の大切さが言われています。

「調べる」ことで、仮説が出来る、繋がる相手が見える、アクションすべき事がわかる。
研究員として日々を送る中で、(また日々多くのNPOの皆さんと伴走させて頂いている中で)実感していることです。

先日、こちらのセミナーにお邪魔してきました。

トヨタ財団さんの今年の「国内助成プログラム」の公募開始に合わせて開催されたセミナーです。

■トヨタ財団 国内助成プログラムの2つの変化


今年の「地域社会プログラム」は2つの変化がありました。

(あくまで私の視点です。)

ひとつは「ロジックモデルの作成」など、「成果(=地域社会の課題解決)につながるアクションや仮説を考えて申請する」というの考え方がより濃く組み込まれていること

もうひとつは、プログラムが”しらべる助成”と”そだてる助成”の2つに組み変わったこと

『しらべる助成、はじまりました!』ということで、開催されたのが、今回の「社会調査入門セミナー」でした。

■玉野先生のこと

今回の講師は、首都大学東京の玉野和志先生。

実は、私の大学院時代の指導教官なのです。

その時書いた修士論文を編纂して公開した論文はこちら

「地域における自治の可能性とその担い手」(季刊政策経営研究)


大学時代、山梨でのまちづくりに関する地域活動、東京でのNPOや中間支援に関するボランティアを通じて感じた問題意識を、玉野先生の論文を読んでより深く考えるようになり、大好きだった山梨県都留市を離れて東京に行くことにしたのは10数年前の話です。

玉野先生は、私が大学院に入る頃から、「NPOやボランティア団体のみなさんの、社会調査の技術相談に応じる」と仰っていました。

まだ都留に住んでいた私は、玉野先生の研究室のHPにそのことが書いてあったのを読んで、なんだか素敵な先生だなあと思ったわけです。

玉野研究室ウェブサイト




<玉野研究室(画像なので詳細はリンクへ)>
トヨタ財団さんとは今年のプログラムについて深くご一緒させて頂いており、 
しかも玉野先生がご登壇、しかも社会調査について、現場で試行錯誤されている皆さん向けに、「入門講座」をされるということ。
もうこれは行くしかない、と思いお邪魔して参りました。
■事前告知も好反応でした。

事前にfacebookでイベントをシェアしたところ、多くの方からの反応が。
個別にも「このセミナーはお勧め」と数人の方にはメッセさせて頂いたり、お会いした方にお伝えしたりもしましたが、そんな時の反応はどなたも”興味津々”という感じ。皆さんの関心の高さが伺えました。
ちなみに最終的な参加申し込み者数は160人を越えたそうです。

末端の末端の末端とはいえ、弟子の1人かつソーシャルセクターに関わる者としては、とにかく嬉しい限りの出来事でした。
■セミナーの内容
セミナーは、まさに「入門編」でした。
逆に言えば、ここだけは知っておきたい、理解しておきたい、という内容ばかり。
自分なりに大切だと思ったことや、自分なりの理解を、自分なりの言葉で備忘メモ。
なお資料と動画は後日公開されるそうです。
【メモ:NPOが「社会調査に挑もう」と思った時に覚えておきたい4つのこと】
(*カッコ内はお話を伺って触発された、私の考えです。)
●社会調査とは何か
知らない人が、知っている人に教えてもらうという営み」のこと。
つまりは、対象者への働きかけに対する何らかの反応を、データとして現実を理解する営みであること。
(*社会調査の「社会」とは何か。それは「人間の営み」だと私は理解しています。その人間の営みを調べるのが「社会調査」であるわけです。)
●社会調査の方法
1.聞き取り調査(ヒアリング)
2.資料収集(文書・文献・統計)
3.サーベイ(標本調査)
の3つがあること。
この3つを適切に組み合わせることが肝であり、調査者の専門性であること。
(恐らく「適切に」と同時に「正しく」。)
●背景への関心
話を聞くプロセスでは、なぜ相手はそれをそう感じるのか、その人がその言葉を発している理由、そう考える理由を丁寧に聞くこと。
そこから見出された疑問を、他の手法で確かめていくこと(例えば文献で。例えばサーベイで。)
(*そうして少しずつ確からしさを掴み、仮説を磨いていくこと。その時に自分との考えや仮説との対話が産まれ、動くべきアクションがわかる。閃きが生まれる。)
●調査には仮説を持ち挑むこと
その課題を課題として認識する、そのトピックスを取り上げるには、恐らく何かしらの仮説が自分たちの中にあるはず。
それを認識し、相手からの反応の中から、さらに仮説を磨くこと。
(これは日々受託案件などの調査企画の立案をする時に常に苦闘していること。自分の中にある仮説を掘り下げる作業はとても苦しいけれどそれを通過しないと強い企画案は書けないことは体感済み。論文でも同じ。)
それらの試行錯誤を通じて第三者でも確信が持てるように、真実に迫れるように、工夫すること。
そうしたことを繰り返し、丁寧に説明して下さいました。


■自分が受け取ったメッセージ
玉野先生から受け取ったメッセージ。
それは、「社会調査とは、人びとの営みを理解しときほぐすための技術である」ということです。

疑問があるということは、ぼんやりしていても仮説がある。なぜならば疑問や違和感は自分の認識と対象との間に何かとのズレがあるから湧くものだから。
相手に問う。すると相手の反応を通じて自分の仮説の輪郭もはっきりする。言ってみれば「自分がこう思っているんだ」ということがわかる。
そこからさらに、仮説を磨いていく。反応を「データ」として大切に取り扱い、現実をそこから「推測」する。その繰り返しが社会調査。
大学院時代に何度も伺った、仮説を持って投げかけること、そこから生まれる相手の反応を、繊細に感じること、その大切さを改めて認識しました。

■自分にとっての収穫

私にとって、何よりの収穫だったこと。
それは、玉野先生から受け取っていたメッセージが、研究員としての自分の内側に内在化されていることに気付けたことでした。
私が玉野先生に師事できたのはたった2年。だからそんなにたいそうなことはいえません。
もちろん玉野先生とは経験年数が違います。
技術で言えば足元にも及ばない。
同じ「研究」と言っても、学術的な観点とシンクタンクの研究員としてのそれでは、磨かれ方には相違があります。
でも、普段自分が、伴走者として支援してきた社会起業家の卵の皆さんや現場で悪戦苦闘されているNPOの皆さんに、「こうやって考えましょう」と伝えてきた中身や、研究員として普段自然に行っている振る舞いの根底に、やっぱり何か影響されていることがあるんだなと感じたのです。
そうか、論文や著作を読んだり、学ばせて頂いたことで、価値観や考え方が内在化されていたんだな、と。
自分にとってはとても嬉しいことでした。
■公開予定の動画、必見です!
まだご準備中かと思いますが、トヨタ財団さん&玉野先生のご好意で、今回のセミナーの内容は動画で公開予定と伺っています。
セミナー告知に際し、「これは絶対に中継or録画すべき!」と、トヨタ財団さんに対して不躾にも即リクエストさせて頂いたのでした。
財団内部でも元々検討されていたとのこと。
こういうセミナーって、どうしても東京中心になりがちですが、実際には地方部にもこの話を聞いて頂きたい、聴きたいと思われている方々はたくさんいらっしゃると思います。
(少なくとも私は、自分が今まで、あるいは現在伴走している地方の団体の方の顔が何人か浮かびます。)
こちらの不躾なリクエストに好意的なリアクションをくださった主催者の皆さんに感謝!です^ ^
動画が公開されたら、またブログやfacebookでお知らせしたいと思います!
トヨタ財団の皆様、日本財団CANPANの皆様、玉野先生、貴重な機会をありがとうございました!
助成の申請〆切は9/30 (金)15:00です!

2016年09月01日 | Posted in 過去ブログからの移行記事(2017年3月以前) | | Comments Closed 

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